2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧
モノクロの勢力地図に一雫(ひとしずく)落ちたインクが世界を染める
山を切り崩して造成された団地の奥の、切り崩されていない森の中で蝉が鳴く。北向きの窓から風と蜩の声が吹き込む夕刻、所々ささくれ立ったタタミに身体を投げ出してKは眠っている。(もしかして) と思ったとことはある。 が、いつだって (まさか) という…
かなかなと疑問の声が鳴り止んで不意に魔が差す夏の夕暮れ
いつのまにか突っ伏すように眠り落ちていた。ボンヤリとした視界の前には四角い海。テーブルの上に置き去りにされた暑中見舞いハガキの中に広がる青。つまんで文面を読む。『猛暑の折くれぐれもご自愛下さいますようお祈り申し上げます』海に行きたい。もう…
従順なふりして眠る猛犬も午睡に飽きる午後三時半
駄菓子屋の前に置かれた赤いベンチに並んで腰掛け、アイスキャンディーの袋を破った。日陰にも容赦なく侵食する真夏の熱気を受けて、食べるスピードより早くアイスキャンディーは溶けていく。ぽた、た、とアスファルトに砂糖水が滴り落ちた。「またはずれ。…
くじ運が無いと嘆いて同情を誘う狙いもはずれてひとり
このまま10首単位でやっていこうと思いますー。 今回のテーマは「別れ」 または「わたしは友達が少ない」です・笑 いいのです、細く長く付き合って下さる人が数人いればそれで十分です。この10首はわりと自分に近い感じの歌で通しましたがやっぱりフィクショ…
ラーメンの具を全部乗せして散財するという愚かな行い
ゆらゆらと追いかけるほど遠ざかるあなたはまるで逃げ水のよう
知らぬ間に途中下車したあの人と幾星霜を超えて会おうか
今はまだ消したふりした方がいい気持ちをコメントアウトで残す
友情に賞味期限があるという君はグルメだよく噛んで喰え
靴紐が縦に縦にと結ばれる 仕方ないよね仏滅の朝
白妙の袂に伏してだるまさんころんだ唱え振り向けば空
四方から便りが同着する不思議 星占いの仕業と思う
梨園の奥様なんて呼ばれてた果樹農家の人お元気かしら
なかよしも数年経てば遠くなる いわんや仲の悪き人をや
最初の1首にストーリーが生まれないとssは挟めないということがわかりました。 無理はするまい…。 とりあえずこの10首の共通テーマは「夏」または「暑くてやんなっちゃう」でした。 いやもう本当に毎日暑いですねー。
紫陽花の鉢が枯れおる愁嘆場よよよと泣き崩れるふりをする
疲れたる人の愚痴聞く昼下がり うんうんそうねそうね同じね
炎昼(えんちゅう)の茹だる暑さに闘犬は陰で静かに眠り続ける
夏よりも冬が嬉しい彼の指先は我よりいつも熱くて
「嫌わずにいてやってよね暑いのが夏の仕事よ頑張ってんの」
朝がきて窓を開ければ冷房が掃きだし窓から吐き出されゆく
複雑なビル吹き抜ける熱い風 面倒だから更地になりたい
まえ歩く人の背中に北極の青い氷のような汗染み
amazonに「残りわずか」と言われると欲しくなるinto思う壺
あかきいろ祭りの如く賑やかにバーゲンセールは夏の習わし
なんとか書けました。疲れた…。 無駄にハードルを上げてしまった自分が悪いのですが、縛りの多いほうがモチベーションが続くかなって…。 最初は性別を固定しない歌にしようと思っていたのに、「我々は」より「僕達は」のほうが口当たりがよかったのでこんな…