2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

SS:010:賞

「…宝くじでも当たんねえかな」「宝くじ?買ってんの?」「まさか。あんな高いもの」「買わなきゃ絶対当たんねえよ」「漫画大賞の賞金でもいい」「漫画?描けんの?」「描けない」「あのさあ」「まああと250日の辛抱だ…明日になったら249日」そうしてAは黙…

010:賞(大島幸子)

良い子でも悪い子でもない僕達の賞罰欄は空白のまま

SS:009:テーブル

母は不在だった。当たり前だけれどテーブルの上には一人分の食事しか用意されてなかったので仕方なく買い置きのカップラーメンを棚から出して一緒に食べる。唐揚げも分けてやろう。5引く2で3個の唐揚げを食べ終えてからラーメンの残り汁に白米をぶち込む…

009:テーブル(大島幸子)

野良犬の目をして挑むテーブルに湯気を満たしたカップラーメン

SS:008:瞬

土地の安い山間に造成された団地から見下ろす街の灯りは遠い。街に家があるAはわざわざバスでこの学校まで登ってきている。朝は大勢の人間がこの団地から街に向かい、夜になると帰ってくる。その流れに逆らう人間に対してバス時刻表は不親切だ。最終バスは…

007:別(大島幸子)

目的地離れすぎてる僕達はここで別れるのが合理的

008:瞬(大島幸子)

ごうごうと風が吼えやまない夜は星のようだね街の瞬き

SS:007:別

下校を促すチャイムの中でAは言う。「回数券無いし、帰れない」「バス代くらい貸すけど」「帰りたくない」不意に、小学二年生の夏に起きた出来事を思い出す。ほんの気まぐれで通りすがりに撫でた犬が家まで付いてきたのだ。団地では動物が飼えない。いま思…

006:券(大島幸子)

自分でもよく見たことがないとこの特別鑑賞券をあげよう

SS:005:叫

古い団地古い幼稚園古い小学校古い中学校。マンモス団地の造成にあわせて作られた教育施設が仲良く老朽化している。酷い日焼けをして中途半端に皮が剥けたような状態の壁を持つ建物の間に、夏になると時折「キャー」という声が響く。幼稚園でプール遊びが始…

005:叫(大島幸子)

古ぼけたコンクリートにきゃあきゃあと叫び谺(こだま)す黄色いくちばし

SS:004:やがて

眠れなくても朝はきて、やがて必ず夜になる。眠つきの悪い人間にとって夜の訪れは憂鬱だ。眠るのがこわい。意識を手放す恐怖。永遠に目が覚めないのではないかという恐怖。教卓の花瓶に活けられた花を眺めるAに「死んでるんだぜ、それ」と言ってみる。勇者…

SS:006:券

「回数券が見つからない」とAはカバンの中身を机の上にぶちまけた。「切り離して持ち歩くから無くすんだよ」「だって冊子のままじゃ財布に入らないし」ないないと言いながら、とうとうAはシャツを脱いで裏返してみたりする。馬鹿だ。そんなところにあるわ…

004:やがて(大島幸子)

やがて散る花の命を惜しむれば「それは切り花、もう死んでるわ」

SS:003:各

作り物のように均一化された個性は幼体期を生き抜く知恵であり擬態だ。かつてその薄皮を脱ぐタイミングは『各自の判断にて』であったが、最近では「それじゃあ困る。不公平だ」とPTAからの苦情が相次ぎ、号令がかけられることになった。彼らは息を潜めて逸脱…

003:各(大島幸子)

きみたちと世界を繋ぐ纜(ともづな)に各々斧を振り下ろすべし

SS:002:甘

イチゴ味のかき氷シロップは真っ赤な無果汁。色も味も香りも苺より苺そのものなのに全てが作り物だという不思議。そういえば春に食べた『本物の苺』は味も香りも甘みも薄かった。リアルなものにはばらつきがある。日照時間と最低気温に左右されるリアル。「…

002:甘(大島幸子)

偽物の色に染まりし舌先は滴るように甘くて赤い

SS:001:新

ラジオ体操が嫌いだった。夏休み、これがなければずっと寝ていられたのにと恨めしく思ったものだ。半覚醒のまま近所の公民館へ行き、同級生におはようを言い、体操してハンコを押してもらってたまにカップ入りのかき氷なんかを貰う。ベタベタした湿気をまと…

参加表明 (大島幸子)

はじめまして。題詠blog2013に参加させて下さい。 頑張って走りぬきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

001:新(大島幸子)

新しき朝は希望の朝たるか疑心暗鬼を祓えよ夜明け