SS:008:瞬

土地の安い山間に造成された団地から見下ろす街の灯りは遠い。街に家があるAはわざわざバスでこの学校まで登ってきている。朝は大勢の人間がこの団地から街に向かい、夜になると帰ってくる。その流れに逆らう人間に対してバス時刻表は不親切だ。最終バスはもう出てしまった。「うち来る?」Aは瞬きを忘れた顔でポカンとこちらを見た。