SS:032:猛

いつのまにか突っ伏すように眠り落ちていた。ボンヤリとした視界の前には四角い海。テーブルの上に置き去りにされた暑中見舞いハガキの中に広がる青。つまんで文面を読む。『猛暑の折くれぐれもご自愛下さいますようお祈り申し上げます』海に行きたい。もう何年も行っていない。印刷された海を爪先で引っ掻いた。水しぶきはたたない。