SS:033:夏

山を切り崩して造成された団地の奥の、切り崩されていない森の中で蝉が鳴く。北向きの窓から風と蜩の声が吹き込む夕刻、所々ささくれ立ったタタミに身体を投げ出してKは眠っている。

(もしかして)
と思ったとことはある。
が、いつだって
(まさか)
という結論に至った。

そうかな。どうかな。まさか、な。

薄く汗ばんだ肌に触ってみたいなんて、嘘だろう?