SS:040:誇

それっきり、Aとは疎遠になった。背中に視線を感じることがあっても、頑なに振り向かずにいた。そうしているうちに、やがてお互いの存在を上手に避ける事ができるようになって、今日はもう卒業式だ。別の友人に伝え聞いたところでは、Aは寮のある県外の高校に進学するらしい。体育館から教室に戻る渡り廊下でAに呼び止められる。
「なあ」「なんだよ。第二ボタンならやらねえぞ」「いらねえよ」「じゃあなんだよ」「あのさ、……ごめんな」「……おう」「じゃあな」「ん。元気でな」「おう」そうしてAは歩き出す。俺の視線を背中に感じているだろうに、決して振り向かず、背筋を伸ばしてゆっくりと遠ざかる。