2014題詠Blogに参加して詠んだもの一覧

ぼんやりと学園ものな10首

段取りを無視して咲いて散る花を廻る季節のスケールとして 001:咲

大人しくしてよ俎上の真ん中は飲食物の持ち込み禁止 002:飲

スカートのプリーツたたみ太腿を腕で抱える体育座り 003:育

旬ものの恋、フレッシュな瓶詰めにしました。(賞味期限:3年) 004:瓶

「おはよう」とひとこときりの返事すら一日分のエナジーになる 005:返事

本年度希望するのは図書委員 螺旋階段を二段のぼる 006:員

あこがれの 不治の病は苦しくて(いつか快復できるといいね) 007:快

ねえ君の原動機付自転車の後ろに乗せて連れていってよ 008:原

永遠は信じてませんカキツバタいずれあやめられる日が来るの 009:いずれ

体力のゲージ残量30秒 せんせい わたし 倒れそう です 010:倒


なんとなくサスペンス風に10首

赤錆のにおいをまき散らしながら濡れて転がるバールのような 011:錆

流れゆく証拠物件と手掛かり 現場検証雨天順延  012:延

『実の』っていわくありげね 実の父 実の妹 実の隣人  013:実

祭壇に花を供える白い花 小窓の中の人と目が合う  014:壇

ねえもっと触ってと身をくねらせて喉奥鳴らす毛艶の良い猫  015:艶

捜査線上に浮かんだ犯人はこの中にいる(と思う)(たぶん) 016:捜

あやしげな店のサービス券こそが決定的な物的証拠  017:サービス

謎解きの一歩手前で立ち止まる孤立無援の断崖絶壁  018:援

「犯人は実の妹なんです」とみのるくんのお父さんは言う 019:妹 

中央署 ブラインドには夕焼けを眺めた跡の折り癖があり 020:央


SF(すこしふしぎ)風に10首

曲がり角きみとファーストコンタクト折々セカイは疑問に満ちる 021:折

不可思議な関東弁を話してる転校生は異物のようで 022:関東

わたくしは宇宙の保健調査員あなたのからだの仕組みを教えて 023:保

現状を確認したら現状の維持を目指すときみは微笑む 024:維

新世紀 モビルスーツ ひみつ道具 なにもないのね(ちょっとがっかり) 025:がっかり

応答せよ応答せよと繰り返す呟きをただ波に放って 026:応

宇宙人(自称)不思議な異邦人そして炎上するアカウント 027:炎

「食パンにバターを塗って焼いてから苺のジャムをかさねてほしい」 028:塗

さよならを告げて溶け残る気持ちはスープカップの底に隠して 029:スープ

船は行く 噴射口からきらきらと飛び散る花火 さよなら(またね) 030:噴


昼ドラ(というか真珠夫人)風に10首

三年を過ぎたらきっと実るからどうか待ってと縋る栗の香   031:栗

寝室のドアは叩かれわたくしは素知らぬふりで眠り続ける    032:叩

連絡もなきまま時は流れ去りわたくしひとりあなたはふたり   033:連絡

理由など聞かないままに受け入れる裏切り者の靴を揃えて   034:由

習わしに因んで若き切り花の茎を手折って夜店に飾る   035:因

純潔の名を付けられて暗闇でふわりと香る真夏のリリー   036:ふわり

終宴にシンクの隅で泣き濡れる/淋しい/わたし/たわし/コロッケ  037:宴

葬列は慣れたものだねかのひとの喪服の上で華やぐ真珠   038:華

水底に鰭を打つ鮭わたくしはこの日のために泳いできたの   039:鮭

わたくしがひとえに守りぬいたもの(跡形もなくほどける身体)  040:跡


闘病もので10首

一生の長さを測る巻尺の尺もそろそろ尽きるようです 041:一生

尊いと初めて思うアディショナルタイム (ホイッスルはいつ鳴るの) 042:尊

この先の身の振り方を教えてとヤフー検索窓に尋ねる 043:ヤフー

絵に描いた餅はうつくしCMの新発売の季節商品 044:発

桑の実の色に染まったはつなつの舌は遠のき西日が差して 045:桑

階段のソプラノ歌手にリクエスト「賛美歌よりもOmbra mai fùを」 046:賛

思い出と秘密と白い骨だけを墓のしたまで持っていくから 047:持

身中の虫と闘うがんセンター待合室に満ちる静けさ 048:センター

空を飛ぶ術を忘れた海鳥は電車に乗って岬へ向かう 049:岬

頻繁に夢と現が入れ替わるうつらうつらと残照の頃 050:頻


サイコ・ホラーで10首

生まれ変われるなら少女人形になるね今度はたいせつにして 051:たいせつ

十戒を破って落ちる地獄ならみんなつみびととてもやすらぐ 052:戒

今すぐに全てを伽藍堂にしてしまおう終末まで待てないや 053:藍

血の染みた暗いつちくれ覆うのは秋の夕陽に照る山紅葉 054:照

芸術の秋の夜長に相応しく血色の蝶が壁を埋めゆく 055:芸術

余罪などありませんから蝶々の髪留め光る少女人形 056:余

県警の捜査本部に祝福を名探偵は何処にもいない 057:県

惨殺と他殺の境界線はどこ?ひとさしゆびでラインを描く058:惨

つちくれをスコップで掘り返すとき裏の畑でポチは泣き濡れ059:畑

懲役は何年ですかできるだけずっと一人でいたいのですが 060:懲


艦これ で10首

今日もまたお呼びがなくて鎮守府の倉庫の中で欠伸をひとつ 061:倉

今日は良いお日和ですねとびきりの航空ショーをお目にかけます 062:ショー

激震が我らに走り狂いゆく国土地理院発行の地図 063:院

深海に潜み棲むもの牙を剥く妖の眼は昏くて赤い 064:妖

慢心を載せて進んだその先の砲撃戦であなたは沈む 065:砲

浸水に傾ぎゆくふね さよならと震える声で名前を呼んで 066:浸

水底を想う日もある過ちは二度としないと手帳に刻む 067:手帳

たたかいにおわりはなくてていとくは「まるで沼だ」と いいえ うみ です 068:沼

排他的経済水域内に涌く異形のものよ 海へお還り 069:排

しっとりとつめたい鉄のかたまりがなんでこんなに可愛いのかよ 070:しっとり


田舎暮らしで10首

縁側に湯呑みはふたつ 大木のキウイに登る猫を見ている 071:側

生活を銘々皿に取り分けて明日も同じおかずでいいよ 072:銘

谷底に転がる石の存在に意義を問われて何もかえせず 073:谷

青空にたなびくけむり「大丈夫、あれは火事じゃあなくて野焼きよ」 074:焼

西からの風は東に吹き抜けて底冷えがする盆地の夜だ 075:盆

春先の小道に落ちる藁と泥 ほのかに香る堆肥の臭い 076:ほのか

集団の中の異物を排除する目聡いひとと耳聡いひと 077:聡

ひび割れた鏡のようにきらきらと棚田の夕日は小分けにされて 078:棚

今日からは黒いものなら黒でよい 絶対君主制の崩壊 079:絶対 

村議会議員は夜に訪れて通夜振る舞いの誘いをうける 080:議


BLっぽいふりーな10首

茜さすプールサイドで目を閉じる君の背中に金網の影 081:網

夕焼けのチェックシートに覆われて消えてしまうね好意のしるし 082:チェック

射るような視線に負けるはつ夏の光のように君は眩しい 083:射

皇帝にひれ伏す民や敬虔な信者みたいに君が好きだよ 084:皇

遥々と遠い昔の約束に僕ひとりだけ囚われている 085:遥

重力に逆らって翔ぶバタフライ魅せておくれよ筋肉の翅 086:魅

擬似針に捕まる魚うそつきの未必の故意が許される頃 087:故意

掌でこじ開けてゆくクロールで七つの海を泳いで渡れ 088:七

突風に胸の熾火は煽られて二段ベッドの梯子を上る 089:煽

シャツの布越しに感じる体温を背中合わせに分けあう日暮れ 090:布


まどマギ叛逆で10首

光降るスノードームの片隅で誰かを待っている観覧車 091:覧

賜った地位はお返しいたします 勝手に好きになってごめんね 092:勝手

木の上でつやつや光る赤林檎ひとくち噛んで印をつける 093:印

その腕の中の愛玩動物は危険種だから解雇しなさい 094:雇

刺繍して咲かせましょうか曼珠沙華 もう要らないの運命の糸 095:運命

スカートのすそ翻しくるくるとワルツのように踊るガン=カタ 096:翻

カーテンをひらきにきたよ陽を当てて影絵遊びは終わりにしよう 097:陽

かみさまの孤独を知ってもうわたし吉祥なんて受け取れないわ 098:吉

世界から切り離された観測所 わかち合えないはちすのうてな 099:観

最後には必ず逢える約束の場所であなたを千切って攫う 100:最後