昼ドラ(というか真珠夫人)風に10首(題詠)

三年を過ぎたらきっと実るからどうか待ってと縋る栗の香   031:栗

寝室のドアは叩かれわたくしは素知らぬふりで眠り続ける    032:叩

連絡もなきまま時は流れ去りわたくしひとりあなたはふたり   033:連絡

理由など聞かないままに受け入れる裏切り者の靴を揃えて   034:由

習わしに因んで若き切り花の茎を手折って夜店に飾る   035:因

純潔の名を付けられて暗闇でふわりと香る真夏のリリー   036:ふわり

終宴にシンクの隅で泣き濡れる/淋しい/わたし/たわし/コロッケ  037:宴

葬列は慣れたものだねかのひとの喪服の上で華やぐ真珠   038:華

水底に鰭を打つ鮭わたくしはこの日のために泳いできたの   039:鮭

わたくしがひとえに守りぬいたもの(跡形もなくほどける身体)  040:跡