2013題詠blogに参加して詠んだもの一覧
新しき朝は希望の朝たるか疑心暗鬼を祓えよ夜明け /001:新
偽物の色に染まりし舌先は滴るように甘くて赤い /002:甘
きみたちと世界を繋ぐ纜(ともづな)に各々斧を振り下ろすべし /003:各
やがて散る花の命を惜しむれば「それは切り花、もう死んでるわ」 /004:やがて
古ぼけたコンクリートにきゃあきゃあと叫び谺(こだま)す黄色いくちばし /005:叫
自分でもよく見たことがないとこの特別鑑賞券をあげよう /006:券
目的地離れすぎてる僕達はここで別れるのが合理的 /007:別
ごうごうと風が吼えやまない夜は星のようだね街の瞬き /008:瞬
野良犬の目をして挑むテーブルに湯気を満たしたカップラーメン /009:テーブル
良い子でも悪い子でもない僕達の賞罰欄は空白のまま /010:賞
あかきいろ祭りの如く賑やかにバーゲンセールは夏の習わし /011:習
amazonに「残りわずか」と言われると欲しくなるinto思う壺 /012:わずか
まえ歩く人の背中に北極の青い氷のような汗染み /013:極
複雑なビル吹き抜ける熱い風 面倒だから更地になりたい /014:更
朝がきて窓を開ければ冷房が掃きだし窓から吐き出されゆく /015:吐
「嫌わずにいてやってよね暑いのが夏の仕事よ頑張ってんの」 /016:仕事
夏よりも冬が嬉しい彼の指先は我よりいつも熱くて /017:彼
炎昼(えんちゅう)の茹だる暑さに闘犬は陰で静かに眠り続ける /018:闘
疲れたる人の愚痴聞く昼下がり うんうんそうねそうね同じね /019:同じ
紫陽花の鉢が枯れおる愁嘆場よよよと泣き崩れるふりをする /020:嘆
なかよしも数年経てば遠くなる いわんや仲の悪き人をや /021:仲
梨園の奥様なんて呼ばれてた果樹農家の人お元気かしら /022:梨
四方から便りが同着する不思議 星占いの仕業と思う /023:不思議
白妙の袂に伏してだるまさんころんだ唱え振り向けば空 /024:妙
靴紐が縦に縦にと結ばれる 仕方ないよね仏滅の朝 /025:滅
友情に賞味期限があるという君はグルメだよく噛んで喰え /026:期
今はまだ消したふりした方がいい気持ちをコメントアウトで残す /027:コメント
知らぬ間に途中下車したあの人と幾星霜を超えて会おうか /028:幾
ゆらゆらと追いかけるほど遠ざかるあなたはまるで逃げ水のよう /029:逃
ラーメンの具を全部乗せして散財するという愚かな行い /030:財
くじ運が無いと嘆いて同情を誘う狙いもはずれてひとり /031:はずれ
従順なふりして眠る猛犬も午睡に飽きる午後三時半 /032:猛
かなかなと疑問の声が鳴り止んで不意に魔が差す夏の夕暮れ /033:夏
モノクロの勢力地図に一雫(ひとしずく)落ちたインクが世界を染める /034:勢
後悔をしたいな舟を漕ぎ出して 海の真中でオールを捨てて /035:後悔
捨てられたペットボトルに少しだけ残った海で溺れてしまえ /036:少
犯人の歯型がついた果物を現場に残す痛恨のミス /037:恨
僕達はひとつのつがいになりましょう 四の五の言わずイエスって言え /038:イエス
胸元に銃を構えた交渉は不成立にて引き金を引く /039:銃
纜(ともづな)を解いて離れる英断をいつかの遠い明日に誇れよ /040:誇
銀色のフォークでこそぐカステラの粗目(ざらめ)が落ちる底の薄紙 /041:カステラ
冬枯れの枝に若芽が吹くようにめぐりくるものおわりなきもの /042:若
完璧な笑顔の君は裏路地の人慣れしない猫に似ている /043:慣
かたちなく けれど確かに在るものの 正しい日本語表記を教えて /044:日本 (修)
うんうんと頷くだけのヒアリング 喋り始めの甥の謎語よ /045:喋
間接話法で日記を書いてみる かっこつけずに他人事みたいに /046:間
繋がりが増えるにつれて繋がりの濃度は薄くなっていきます /047:繋
立ち位置で変わらぬものの一例に「西に見えても南アルプス」 /048:アルプス
我々と括ってみても虚しくて わたしはわたしあなたはあなた /049:括
疑いを互いに隠し持つ夜に箍(たが)を外してこたえ違えず /050:互
謹んで諸般の事情を考慮した玉虫色の返答をせよ /051:般
五十歩百歩ダブルスコアの距離を鼻歌まじりのスキップで進め /052:ダブル
まごころを確かに渡したはずなのに受け取り印をもらえずにいる /053:受
テーブルの上に転がる赤い実を割って兎の商を求めよ /054:商
境界を踏み越えるのは駄目だけど狭間でくちづけするのは許す /055:駄目
逃げて行く君の背中を思い出す 一人の夜の独り善がりに /056:善
凶暴な想いは箱に閉じ込めて息を潜めて衰弱を待つ /057:衰
木枯らしに秀でた額あばかれて寄せた頬から熱は沁みゆく /058:秀
永遠に果ての見えないこの道を遠く遠く遠くまで行こう /059:永遠
改札に並ぶ人々ポケットのカード取り出し応える誰何(すいか) /060:何
人慣れぬ獣もいつか愛を知り尾を振ることをいとわなくなる /061:獣
この度はご愁傷様この紙に住所氏名をお書きください /062:氏
並列な地平にきみは立っている それ以上でも以下でもないよ /063:以上
生きてゆくという軛(くびき)を持つ刑徒(けいと)いづれの日にか露と消えなむ /064:刑
トンネルを抜けて世界の果てまでも(後逸されし暴投球は) /065:投
炊きたてのご飯と鮭と味噌汁と なんてきれいな朝の食卓 /066:きれい
真夜中の砂漠の井戸の暗闇に小石を投げて深さを測る /067:闇
年上の兄弟が欲しかったなあ って長子なら思いますよね /068:兄弟
雪月花 寒さで指がかじかんで視度調整がうまくいかない /069:視
倦怠に炙りだされた情欲が照柿色の夕日に溶ける /070:柿
得意気な笑顔が眩しかったから この暗闇に未だ慣れない /071:得意
もういちど生まれ変わろう柔らかな産毛同士が触れ合う夜に /072:産
自分史上最大級のダメージを避けるすべなくまともに喰らう /073:史
その角で出会う予定の運命にワルツのステップで回避される /074:ワルツ (修)
『裕福』の定義は“ちょっと良い米”を迷わず籠に放り込めること /075:良
冬空に納戸色したブレザーと赤いマフラー奇跡の調和 /076:納
うっすらと積もった雪のその下はアイスバーンだ油断めさるな /077:うっすら
大海をさまよう椀の真ん中で一寸法師は途方に暮れる /078:師
現実と絵空事とを間違える 君は悪い子(主に頭が) /079:悪
修羅道が映る四角い窓を閉め今日は一日眠っていたい /080:修
ぬるま湯の中で自分の輪郭がほどけて溶ける夢をみている /081:自分
ふみはずせ さほど柔くはない肌の下を流るる血潮も熱し /082:柔 (修)
霞立つ野から千鳥は飛び去ってゆめさめてなお聞こえる羽音 /083:霞
みちしるべ 子犬が吠える角を右 たんぽぽが咲く庭を左に /084:左
清潔な君の歯列はシャッターでノックをしても決して開かない /085:歯
神無しのさやけき月に照らされて薄ぼんやりと浮かぶ道行き /086:ぼんやり
もしかしてお腹すいてる? ジェラシーの炎で焼いた餅ならあるよ /087:餅
うなだれて雨に打たれる弱竹(なよたけ)の姿を布団の中から想う /088:弱
真緑の壁に出口を見つけたら駆け込めピクトグラムの人影 /089:出口
「唯一」ときみに告げれば「最上」と応えが返る齟齬の悲しき /090:唯
分水の嶺で別れた彼のひとと鯨の腹の中でまた会う /091:鯨
くちづけは局所麻酔かくちびるが痺れて言うべきことを言えない /092:局
遠き日のかなしみが住む部屋のドア 忘れてしまえ 鍵も捨てよう /093:ドア
衆目の追尾機能を振りきって走りぬけよう空のはてまで /094:衆
冬の朝 肌に馴染んだ掛布団 「離れがたい」の一例として /095:例
早足で過ぎる季節の折々を なすすべもなく立ちて見送る /096:季節
気持ちとは移ろいやすいナマモノで品質保証いたしかねます /097:証
揺さぶれば濁る言葉を呑み込んで上澄みだけをきみにあげたい /098:濁 (修)
待ち人を待ちぼうけする足下のアスファルトには「止まれ」の文字が /099:文
止め処なく世界を満たす夕暮れにそれらすべては架空となりて /100:止
※文末に (修)とついているものは、投稿後に助詞等を修正したものです。