2013-01-01から1年間の記事一覧

072:産(大島幸子)

もういちど生まれ変わろう柔らかな産毛同士が触れ合う夜に

071:得意(大島幸子)

得意気な笑顔が眩しかったから この暗闇に未だ慣れない

70まで

詠みました。 あと残り30…今月末までに間に合うかな…?ところで70首目の「倦怠に〜」は高村薫の「照柿」を思い出しながら詠みましたよ。

070:柿(大島幸子)

倦怠に炙りだされた情欲が照柿色の夕日に溶ける

069:視(大島幸子)

雪月花 寒さで指がかじかんで視度調整がうまくいかない

068:兄弟(大島幸子)

年上の兄弟が欲しかったなあ って長子なら思いますよね

067:闇(大島幸子)

真夜中の砂漠の井戸の暗闇に小石を投げて深さを測る

065:投(大島幸子)

トンネルを抜けて世界の果てまでも(後逸されし暴投球は)

064:刑(大島幸子)

生きてゆくという軛(くびき)を持つ刑徒(けいと)いづれの日にか露と消えなむ

066:きれい(大島幸子)

炊きたてのご飯と鮭と味噌汁と なんてきれいな朝の食卓

063:以上(大島幸子)

並列な地平にきみは立っている それ以上でも以下でもないよ

062:氏(大島幸子)

この度はご愁傷様この紙に住所氏名をお書きください

061:獣(大島幸子)

人慣れぬ獣もいつか愛を知り尾を振ることをいとわなくなる

060:何(大島幸子)

改札に並ぶ人々ポケットのカード取り出し応える誰何(すいか)

059:永遠(大島幸子)

永遠に果ての見えないこの道を遠く遠く遠くまで行こう

058:秀(大島幸子)

木枯らしに秀でた額あばかれて寄せた頬から熱は沁みゆく

057:衰(大島幸子)

凶暴な想いは箱に閉じ込めて息を潜めて衰弱を待つ

056:善(大島幸子)

逃げて行く君の背中を思い出す 一人の夜の独り善がりに

055:駄目(大島幸子)

境界を踏み越えるのは駄目だけど狭間でくちづけするのは許す

054:商(大島幸子)

テーブルの上に転がる赤い実を割って兎の商を求めよ

053:受(大島幸子)

まごころを確かに渡したはずなのに受け取り印をもらえずにいる

052:ダブル(大島幸子)

五十歩百歩ダブルスコアの距離を鼻歌まじりのスキップで進め

051:般(大島幸子)

謹んで諸般の事情を考慮した玉虫色の返答をせよ

049:括(大島幸子)

我々と括ってみても虚しくて わたしはわたしあなたはあなた

050:互(大島幸子)

疑いを互いに隠し持つ夜に箍(たが)を外してこたえ違えず

048:アルプス(大島幸子)

立ち位置で変わらぬものの一例に「西に見えても南アルプス」

047:繋(大島幸子)

繋がりが増えるにつれて繋がりの濃度は薄くなっていきます

045:喋(大島幸子)

うんうんと頷くだけのヒアリング 喋り始めの甥の謎語よ

044:日本(大島幸子)

かたちなく けれど確かに在るものの 正しい日本語表記を教えて (※トラックバック後に修正)

043:慣(大島幸子)

完璧な笑顔の君は裏路地の人慣れしない猫に似ている